PR 更新日 : 2024.08.15

健康保険とはどんなものか 種類と切り替え方など

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一般的にいう「健康保険」とは、社会保険のひとつである「公的医療保険」を指します。公的医療保険は、加入者がケガや病気をした時に、必要な医療を割安に受けられる仕組みです。加入者は収入に応じて保険料を支払って医療費の一部を負担し、残りの医療費は国や事業者が負担します。

公的医療保険はおおまかに言うと「健康保険(社会保険)」「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」の3つに分かれていて、職域・地域・年齢に応じていずれかに加入となります。

この記事では、「健康保険(社会保険)と国民健康保険の違い」「健康保険で受給可能な給付」「健康保険と国民健康保険を切り替える方法」、加えて「社会保険システムの区分け」も説明するので参考にしてください。

社会保険の区分けを知って、健康保険の大枠を知ろう

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日本の社会保険は、「公的医療保険」「公的年金」「公的介護保険」「労災保険」「雇用保険」の、5つに分けられています。

そのうち公的医療保険は、大きく分けて、「職域保険(被用者保険)」「地域保険」「後期高齢者医療制度」の3本柱です。さらに「職域保険(被用者保険)」は「健康保険(社会保険)」「共済保険」「船員保険」、「地域保険」は「国民健康保険」へと分かれます。

なお、健康保険(社会保険)に関しては、勤め先に健康保険組合があるならその組合、ないときには協会けんぽに加入する設定です。

健康保険種類 内容
組合管掌健康保険(組合健保) 被保険者数が700人以上の事業所、または、被保険者数が3,000人以上の同種・同業グループが、国の認可を取得した上で運営する、独自の健康保険事業
全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ) 独自で健康保険組合を持たない中小企業に属する被保険者が加入するために、協会けんぽが保険者として運営する健康保険事業

健康保険(社会保険)・国民健康保険の違い

健康保険(社会保険)と国民健康保険では、加入対象者、扶養についての考え方と対応、保険料の計算方法などが異なります。

加入対象者の違い

社会保険(健康保険)と国民健康保険は、加入対象者に違いがあります。

社会保険(健康保険)の加入対象者は以下5つの条件に該当する方です。大枠で言うと、会社員(正規社員・一定条件を満たす非正規社員)や公務員となります。
【社会保険(健康保険)の加入対象者】

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 所定内賃金が月額8.8万円以上
  • 2ヶ月を超える雇用の見込み
  • 学生ではない(夜間学生、通信制は除く)
  • 従業員101人以上(※)の事業所(特定適用事業所)で働いている
  • ※2024年10月からは「従業員数51人以上」に変更されます。

参照元:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内

国民健康保険の加入対象者は、以下の方です。大枠で言うと、フリーランスや自営業などの企業に属していない人、無職の人、年金受給者となります。
【国民健康保険の加入対象者】

  • 社会保険など他の医療保険制度、もしくは医療費補助制度を利用していない国民

扶養の考え方・対応の違い

社会保険(健康保険)と国民健康保険は、扶養についての考え方や対応に、違いがあります。

社会保険(健康保険)では、被保険者は親族を扶養することが可能です。扶養対象者がいてもいなくても、扶養対象者が複数名いたとしても、被保険者の保険料は変わりません。扶養対象者(被扶養者)とできる範囲、被扶養者の収入には、決まりがあります。

【社会保険(健康保険)の被扶養者の範囲】

  • 主として被保険者に生計を維持してもらっている、被保険者の直系尊属・配偶者(事実婚含)・子・孫・兄弟姉妹
  • 主として被保険者に生計を維持してもらっている、被保険者の同一世帯員のうち、以下の方
    ・被保険者の三親等以内の親族
    ・被保険者と事実婚の人の父母および子
    ・上記事実婚の人が亡くなった後における父母および子

【社会保険(健康保険)の被扶養者の収入基準】

  • 同居の場合:
    年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)、加えて、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合
  • 別居の場合:
    年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)、加えて、被保険者からの援助による収入額より少ない場合

参照元:全国健康保険協会「被扶養者とは?

一方、国民健康保険には、扶養の概念自体がありません。生計が同一の親族でも、各自が被保険者で、保険料もそれぞれが所得に応じて支払います。

保険料の計算方法の違い

社会保険(健康保険)と国民健康保険は、保険料の計算方法に違いがあります。

【社会保険(健康保険)の保険料】

  • 被保険者の年齢、4月〜6月の給与などの平均額から「標準報酬月額」を決めて算出
  • 満40歳からは介護保険料も加算
  • 健康保険料は、被保険者・勤務先の事業者と折半して支払う
  • ※加入している保険組合、都道府県によっても違いがあります。
    詳しい保険料率は、加入している保険組合、都道府県のWEBサイトでご確認ください。

参照元:全国健康保険協会(令和5年3月分から)「令和5年度保険料額表

【国民健康保険の保険料】

  • 世帯の被保険者全員分の保険料を、世帯主が納める
  • 被保険者の人数・年齢・収入をもとに保険料を計算
  • ※保険料は居住地によっても違いがあります。国民健康保険は被保険者が在住する市区町村の運営のためです。詳しい保険料率は、居住する市区町村のWEBサイトでご確認ください。
    ※所得金額が基準を下回る世帯には保険料減額制度があるので、在住する市区町村に確認しましょう。

健康保険で受給可能な給付

健康保険では、病気やケガをした際の医療費だけでなく、出産や介護などの場面で給付を受けることができます。主な給付種類は下記です。

給付の種類 給付の内容
医療費の給付 医師の診療、入院、手術、薬の処方など、病気やケガの治療に必要な医療費の一定割合を支給
出産費の給付 出産にかかる費用の一部を支給
高額療養費の支給 1カ月の医療費が一定額を超えた場合、その超えた部分について支給
療養費の支給 医療機関以外で受けた治療費の一部を支給する場合あり(訪問看護、鍼灸など)
介護保険料の支給 高齢者や障害者の方の介護保険料の一部を支給する場合あり

上記以外にも「歯科治療(一部の歯科治療費)」「眼鏡の購入(条件を満たした眼鏡の購入費用の一部)」「人工透析(腎臓病が理由での人工透析費用)」など、健康保険の種類や加入している組合によって、様々な給付が受けられる場合があります。

給付内容や手続きは健康保険組合によって異なります。また、社会状況の変化に伴って給付内容が変更されることもあるため、健康保険組合のウェブサイトなどで最新情報をご確認ください。

なお、健康保険の給付を受けるためには、一定の手続きが必要です。また、医療機関を受診したり別途指定の手続きをしたりする際には、健康保険証の提示が必要になります。

健康保険(社会保険)と国民健康保険を切り替える方法

会社員からフリーランスになる、フリーランスから会社員になるという変化が生じる場合は、健康保険(社会保険)と国民健康保険の、切り替え手続きをすることになります。健康保険(社会保険)と国民健康保険では、加入条件が異なるためです。

変更手続きは保険の種類によって異なり、健康保険(社会保険)の手続きは会社が行うことが一般的で、国民健康保険の手続きは自分自身で行う必要があります。

健康保険(社会保険)から国民健康保険に切り替えの場合

切り替え対象者の手続き

切り替え対象者は、自身と扶養家族の、健康保険(社会保険)の健康保険証を、会社に返却しましょう。そして、国民健康保険への加入手続きを自身で行なってください。国民健康保険への加入手続きは、居住する市区町村の役所で行えます。

日本には「国民皆保険制度」があり、国民はすべて公的医療保険に加入する決まりであるため、健康保険(社会保険)の資格を喪失した人は、資格喪失日(退職日の翌日)から、国民健康保険に強制加入です。保険料は自動的に発生し、資格喪失日以降14日以内に自身で国民健康保険加入の届出を行う必要があります。

会社の手続き

健康保険(社会保険)の資格を喪失した従業員がいる場合、会社は「被保険者資格喪失届」を資格喪失日(退職の場合は退職日の翌日)から5日以内に、日本年金機構へ提出してください。資格喪失届の提出時には、資格喪失対象者とその扶養家族の健康保険証の返却も同時に行いましょう。

国民健康保険から健康保険(社会保険)に切り替えの場合

切り替え対象者の手続き

切り替え対象者は、国民健康保険の脱退手続きを自身で行いましょう。居住する市区町村の役所で行えます。健康保険(社会保険)への加入手続きは、それぞれの会社の指示に従ってください。通常、健康保険(社会保険)への加入手続きは会社が行います。

会社の手続き

健康保険および厚生年金保険の加入基準を満たした従業員を会社が雇用した場合、対象者が加入資格を得た日(入社日)から5日以内に「被保険者資格取得届」を管轄の年金事務所に提出しましょう。対象者に扶養家族がいる場合は「健康保険被扶養者(異動)届」もあわせて提出します。

どちらの場合であっても、新しい保険証が届くまでには、通常1~3週間程度の時間がかかるでしょう。その間に病院に行きたい場合は、保険証の手続きをしている会社または市町村の役所に「健康保険被保険者資格証明書」の発行を依頼してください。証明書を病院に提示すれば保険診療を受けることが可能です。

前職も転職先も健康保険(社会保険)という場合でも変更手続きは必要

企業間で転職した場合には、前職の健康保険(社会保険)を資格喪失させ、転職先で健康保険(社会保険)に改めて加入することになります。企業ごとに加入している健康保険(社会保険)が異なるためです。

退職時の手続き

自身と扶養家族の健康保険証を、前職の会社に返却してください。そして、前職の会社から「健康保険資格喪失証明書」を受け取ります。この証明書は、転職先の会社での保険加入手続きに必要です。

転職先の会社での手続き

転職先の会社に、前職から受け取った「健康保険資格喪失証明書」を提出してください。その後は、一般的には転職先の会社が健康保険(社会保険)の加入手続きを行い、新しい保険証が発行されます。

細かな手続きは、会社や個人の状況(扶養家族の有無など)によって異なるため、事前に前職の会社や転職先の会社に確認しましょう。

退職時に選択可能な「健康保険(社会保険)の任意継続制度」

資格喪失日から起算しての2ヶ月以上のあいだ健康保険(社会保険)に加入していた場合は、退職後もそのまま健康保険(社会保険)を任意継続することが可能です。

健康保険(社会保険)の任意継続では、被扶養者も任意継続されます。つまり、被扶養者の人数に関わらず、健康保険料は1人分です。ただし、健康保険(社会保険)の方が必ずしも安いとは限りません。会社員の健康保険(社会保険)の保険料支払いは被保険者と事業者の折半ですが、任意継続では被保険者が全額支払うためです。

健康保険(社会保険)を継続させるには、退職日の翌日から20日以内に任意継続申請をする必要があります。料金比較をしてから任意継続するかどうか決める場合は、早めに役所などに相談にいきましょう。ちなみに、任意継続の健康保険(社会保険)の加入期間は退職日の翌日から2年間です。

なお、全国健康保険協会(協会けんぽ)で任意継続する被保険者は、任意継続中に国民健康保険料の方が安くなった場合は、申請することで任意継続の資格喪失を行えます。加入している全国健康保険協会(協会けんぽ)の都道府県支部で「資格喪失申出書」を提出しましょう。一方、健康保険組合で任意継続する被保険者は、途中で資格喪失をすることができないことが一般的です。任意継続を決める前に規則を確認しておきましょう。

任意継続について(全国健康保険協会)
任意継続被保険者になった場合は、原則として、在職中と同様の保険給付が受けられます。ただし、退職日まで継続して1年以上被保険者であった方が、退職日時点で傷病手当金や出産手当金を受けているか、受ける条件を満たしている場合を除き、傷病手当金や出産手当金を受けることはできません。
引用元:全国健康保険協会 「会社を退職するとき

健康保険に関するよくある質問

健康保険証を紛失した場合、どうすればよいですか?

健康保険証を紛失した場合は、できるだけ早く下記の手続きを行いましょう。

警察への届け出

最寄りの警察署に紛失届を提出しましょう。保険証は身分証代わりになるため、警察に届け出ることが重要です。

再発行の手続き

・健康保険(社会保険): 会社の担当者に紛失を伝え、再発行の手続きを進めてもらいましょう。
・国民健康保険: 市区町村の役所(国民健康保険担当窓口)に自ら行って、再発行の手続きを行います。
※再発行手続きには、身分証明書、印鑑、再発行手数料などが必要です。
※再発行には、一般的に数日から数週間程度の時間がかかります。
※保険証が再発行されるまでの間に医療機関を受診する際は、会社や市区町村で発行してもらえる「資格証明書」を提示することで、保険診療を受けることが可能です。

なお、紛失した保険証が見つかった場合は、再発行された保険証と併せて、紛失した保険証を保険者に返却する必要があります。また、不正利用防止のために、定期的に保険証の利用状況を確認したり、クレジットカード会社に連絡して不正利用防止措置を講じたりすることも大切です。

海外旅行中に病気になった場合、健康保険は使えますか?

海外旅行中に病気になった場合、日本の健康保険は、原則として直接利用することはできません。日本の健康保険は、海外では効力がないためです。海外旅行中の医療費については、以下の対策を検討しましょう。

海外旅行保険への加入

海外旅行保険に加入していれば、海外での病気やケガによる医療費、帰国のための費用などが補償される場合があります。加入する前に、補償内容をしっかりと確認しましょう。

クレジットカードの付帯保険

一部のクレジットカードには、海外旅行保険が付帯されている場合があります。利用しているクレジットカードの保険内容を確認しましょう。

日本の健康保険証は海外では効力がありませんが、海外で治療を受けた後、日本に帰国して一定の手続きを行うことで、一部の医療費を払い戻してもらえる「海外療養費制度」というシステムはあります。海外療養費制度では、下記のような条件があるため、事前に詳しく確認することが必要です。
・海外療養費制度の適用対象となる治療内容は、 日本国内で保険診療として認められている医療行為に限る
・費用は全額が払い戻されるわけではなく、一定の自己負担が発生する
・手続きに必要な書類が多く、手続きに時間がかかる場合がある

著者 : 株式会社クヌギ

2009年設立。日本クレジット協会 準会員、全国消費生活相談員協会 企業賛助会員。

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